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解説
本作は、フランスのヌーヴェルヴァーグのイコン、ジャン=ピエール・レオを、ロマンティックな若い理想主義者で、売り出し中のポップ・スター、シャンタル・ゴヤ(イエイエガールのマドレーヌ役)を追っかける文字通り「ライオン・ワナビー」[1]な役どころ(ポール役)にキャスティングしている。明らかに違う音楽性(ポールはバッハマニア)と政治学習(ポールはコミュニスト、マドレーヌは無関心)にもかかわらず、ふたりはすぐにロマンティックな間柄になり、マドレーヌのふたりのルームメイト、カトリーヌ(カトリーヌ=イザベル・デュポール)とエリザベート(マルレーヌ・ジョベール)と4人で同居することになる。
表面上はギ・ド・モーパッサンの2つの作品に基づいているが、ゴダールはぶっつけ本番のルポルタージュと「演出(Mise en scène)」を混ぜ合わせ、若さと性(フランスでは、18歳未満には禁じられた。「真の観客と考えていたのに」とゴダールはぼやいた。そのときベルリン国際映画祭は「若者のためのベストフィルム」と名づけた)の著しく正直な肖像をつくりだそうとした。ゴダールのカメラは、愛とセックスと政治についての一連のシネマ・ヴェリテ・スタイル(vérité-style )のインタビューにおいて、若い俳優たちを深く探った。
ゴダールの絶頂期のほかのどの作品よりも、『男性・女性』は、1960年代のフランスとパリのタイムカプセルであり、シャルル・ド・ゴールやアンドレ・マルローからジェームズ・ボンドやボブ・ディランまでのリファレンスをもっており、そして、これが真のゴダール式なのだが、冗談としゃれと不合理な推論に溢れ、一見無関係な事件によって繰り返し中断される物語 - 女が夫を射殺する、リロイ・ジョーンズの『ダッチマン』から置き換えられたシーン、ビストロでの芝居の一行のくだりをリハーサルするブリジット・バルドー、スウェーデンの映画内セックス絶頂アートフィルム[要校閲] とともに画面上でモノが熱くなったちょうどそのとき離れて大股で歩くレオ、外に出て映写室につづく外階段を登り、そこで彼は縦横比についての講義をし、ピンボール・アーケードでは武装した凶悪犯がレオに生死の選択を迫り、第三の選択肢に観客を驚かせ、壁に反戦スローガンをスプレーで書き、そしてさらにつづく。
本作からのもっとも有名な引用句は、実際に章間にインサートされたタイトルにあるこのひと言である。「この映画は『マルクスとコカコーラの子どもたち』と呼ばれたい」。